夏の盛りのロマンチック

腰かけたベンチの隣期せずして向日葵の花涼風至

                      縁の下のねこ麻呂

カメラの三脚を担いで登る小高い丘の山腹で、足を休めようと座ったベンチ。

陽の光を真っ向と受け、笑いかけるように咲くビタミンカラーの花。

思いもかけない出会いに心動かされた八月六日。

目黒川ロマンチック

花冷えの夜桜見つつ草団子くしゃみを一つ満月の夜

縁の下の猫麿

月夜に照らされた、薄いピンクの花びらを、携帯電話のカメラで必死に撮ろうとする君。露店で売られた団子を頬張りながら、僕はくしゃみひとっつ。花より団子。

大洗ロマンチック

海原に 咲いた真夏の 向日葵を 見たくて飛んだ ビーチサンダル

縁の下の猫麻呂

サンフラワー号に乗って、北の国へと変える人の波。彼氏が乗ったあの船を一目見たくて跳ねたっけ。向日葵の花びらを送り出すのは、私一人ね。首から下げた双眼鏡、覗くことすらできないじゃない。

由比ヶ浜ロマンチック

波乗りが 浮かぶ夕べの 由比ヶ浜 追いかけてみる 富士の陰影

縁の下の猫麻呂

夕暮のあかね空、逆光線の富士山の陰に向かって、パドルを漕ぐ。小さくうねる水面には、群青の深みを帯びた冷たさがある梅雨のサーフィン。

桜木町ロマンチック

失って初めてわかる虚しさに今生きること星の瞬き

縁の下の猫麻呂

長野で見たあの星の瞬きのように、私の人生も、長い宇宙の歴史からすれば、一瞬のことなのかもしれない。夏の終わりの風物詩、線香花火の瞬きに、堪え耐えることの重さを身につまされた感じが致します。敬意を込めて、感謝。

道頓堀ロマンチック

唇に付いた青のりそっと拭く土曜日の夜マジ好きやねん

縁の下の猫麻呂

 

土曜日の何気ない夜の一コマ。お好み焼き店を出た隣のバーの路地裏で、人目を惜しんで、キスをする。街のネオンに消える二人の影。

立体交差下ロマンチックin町田

フリクション・ペンで消したい経歴は何もしないで過ごしたあの日

縁の下の猫麻呂

 

夢ばかり追いかけて、現実を見なかった20代前半のちょっと塩っ辛い思い出。

書類を訂正するときは、二重線で消すのがルールと教わったけど、訂正をしたこと自体は訂正できないもどかしさ。

クリスマス・イブの繁華街。あまり人気のない立体交差の下の店。軒先でかじかんだ手をさすっては、あの娘が来るのを待っていた。

 

首都高ロマンチック

オレンジの街灯の下湾岸線 小指繋いで踏んだアクセル

 

縁の下の猫麻呂

 

ディズニーランドで遊び疲れた二人でも、朝日の上がる鵠沼で、

一寸ばかりのロマンスを味わいたくて、深夜の湾岸、車内で手をつなぎながら突っ走ったね。

名古屋ロマンチック

君が残した記憶だけ抱いて走るよ新幹線

 

縁の下の猫麻呂

 

君が残した言葉の断片、表情を思い返しながら、頬を伝う涙。

毒りんごクッキーを「食べたよ」との言葉に、「効果あり」の返事くらいはしてもよかったのかもしれない、と昔のことを悔やんだりして。